今回は「門脈体循環シャント」という疾患をご紹介いたします。
まず、「門脈」とは胃・小腸・大腸・脾臓・膵臓などの腹腔内臓器の血液を集めて肝臓に送る役割を持った血管のことです。
胃腸からの血液には栄養以外に毒素が含まれており、門脈を通って肝臓に運ばれることで解毒され、体に無害な状態となります。
「門脈体循環シャント」とは、この門脈と全身の静脈の間をつなぐ余計な血管(シャント)が存在することによって、肝臓で無毒化されるべき有害物質が処理されずに全身をめぐってしまい様々な症状が出る病気です。
典型的な症状としては、流涎やふらつきやけいれん発作(特に食後)、発育不全などです。
また泌尿器系にも悪影響を及ぼして尿石症の原因となることもあります。
特徴的な検査所見としては小肝症および高アンモニア血症が挙げられます。
実際の症例をご紹介いたします。
他院で膀胱結石および高アンモニア血症が認められ門脈体循環シャントを疑い当院でCT検査を実施した症例です。
その症例のレントゲン画像と正常な子のレントゲン画像を比較してみましょう。
門脈体循環シャント疑いの症例
正常な症例
赤く囲っている領域が胃で、青く囲っている領域が肝臓です。
やはり門脈体循環シャント疑いの症例は小肝症が認められます。
また血液検査ではアンモニアが高値で、膀胱内に結石も認められました。
CT検査を実施したところ門脈体循環シャントが認められました。
赤い領域が静脈、青矢印でしめしているものがシャント血管です。
治療法については外科的な治療がすすめられます。
余計な血管を結紮(糸などで縛ってふさぐ)することで、血流を遮断し門脈がしっかりと肝臓に流れるようにするというものです。
放っておくと肝臓が徐々に機能不全になっていくのでできる限り早期の治療がベストです。
この症例は術後の経過は良好で、アンモニアの数値も正常に落ち着いてくれました。
珍しい病気ですが、しっかりと診断、治療をしないと進行してしまうので気にる症状があればご相談ください。
永松