以前に「再発性上皮びらん」という、
なかなか治らない眼の病気のお話をしたことがあります。
これは角膜の上皮がうまく修復されず、
治療が長期的な経過を辿ることが多い疾患です。
通常の角膜損傷に対して行う点眼治療では回復せず、
自身の血液から作製する特別な点眼剤(血清点眼)や、
遊離している角膜上皮に対する
局所的な処置(デブライトメント、格子状切開)などを
組み合わせて治療していきます。
先日、この疾患の治療をしたワンちゃんをご紹介いたします。
当初は単純な角膜損傷の治療を行っていましたが、
治療の反応が思わしくなく、
治療開始から1ヶ月が経過していましたが、
まだ治癒しておりませんでした。
抗生物質の点眼剤や血清点眼、
遊離した角膜上皮を綿棒でこそぎ落とす
デブライトメント処置などを行いましたが改善が見られず、
角膜上皮にあえて傷をつける格子状切開を行うことになりました。
こちらが施術前の角膜の状態です。
緑色に染まっている部分は角膜上皮が遊離している部分です。
これが小さくなったり(改善)、大きくなったり(再発)を繰り返していました。
こちらが格子状切開を行った後の写真です。
縦横に無数の引っかき傷が確認できるかとおもいます。
施術後に動物用コンタクトを設置し、瞼を軽く閉じて施術終了です。
これに点眼治療も加えて経過を見ていきます。
こちらが施術2週間後の写真です。
半分以下に縮小していることがわかります。
あと一息というところです。
しかし、この病気は再発を繰り返すことが多く、
しっかりと回復しても、再発に注意していかなければなりません。
気になることがあればご相談ください。
獣医師 高木