皮膚糸状菌症は、猫の皮膚感染症の中では比較的多くみられ、1歳未満の若齢猫や多頭飼育の猫での発症が多く認められる真菌の伝染性皮膚疾患です。
また、動物だけでなく人にも感染しうる人獣共通感染症なので、衛生学的にも重要視される病気の一つです。
皮膚糸状菌は角化した組織(皮膚の表層、爪、毛)に侵入するといわれており、なかでも猫の皮膚糸状菌症は毛に感染するのが一般的です。
感染毛は長期的に感染能力を保持し、体表から離れた後も常温で最大13~18か月間生存すると言われています。
そのため、感染源は罹患動物との直接接触だけでなく、感染毛が残存する生活環境にも配慮しなければいけません。
今回、お家に迎えて間もない3か月齢の子猫に皮膚糸状菌症の発症が認められましたので、その診断と治療経過、お家での対処法についてご紹介させていただきます。
感染部位は毛が薄く、脱毛、裂毛(途中でちぎれている毛)、鱗屑(フケ)が認められました。
検査はウッド灯検査、抜毛して顕微鏡検査を実施しました。
ウッド灯検査とは、感染毛に紫外線を当てると蛍光を発することを利用した方法で、実際に脱毛部位にあててみると写真のように青白く光りました。
この発光したところを中心に抜毛して顕微鏡で見ると、毛の周囲にツブツブとした真菌の分節分生子が沢山認められました。
ネコちゃんの処置・治療として、脱毛部位を広めに毛刈りして、抗真菌薬の外用薬(テルビナフィンクリーム)2週間塗ってもらい、同時に内服薬(イトラコナゾール)も2週間飲んでもらいました。
生活環境への配慮として、その子が使っていた部屋やトイレ、食器など、全て洗浄してもらい、次亜塩素酸ナトリウム希釈水にて消毒してもらいました。
2週間後には発毛がみられ、現在は元気に成長しております。オーナー様には再発予防として引き続き環境中の洗浄、消毒、猫の免疫低下防止に努めてもらっています。
最後に、ワンちゃんネコちゃんの脱毛には他にもたくさんの原因があります。特にねこちゃんで脱毛がみられた場合にストレスかも~と様子見られる方がいらっしゃいますが、放っておくと病変がどんどん広がることがありますので、まずは感染症や他の疾患を否定するために一度来院されることをお勧めいたします。
獣医師;田上
(参考;獣医内科学第2版小動物編 文永堂出版p537-538、VetrinaryImformation”Vet i” No.33 2022 p12-28)